PM2.5による危機回避
近年、よく耳にする「PM2.5」。何やら中国で石炭を燃やしていて有害な毒が蔓延しているらしい。それが偏西風に乗って日本にやってくるんだって!え!それって危険じゃん。でも、どんな対策したらいいんだろう、、、。
何かよくわからないけど危険そうな「PM2.5」どんなものなのかよく知って対策をしましょう。
PM2.5って何?
2.5μm以下の粒子は全てPM2.5
「PM2.5」という物質名があるわけではありません。
PM2.5は「Particulate Matter less than 2.5μm in aerodynamic diameter」の略になり、
空気中で2.5μm以下の物質は全てPM2.5と呼ばれ、それがどんな物質であってもよいのです。ものすごい細かい小麦粉なら、それもPM2.5ということになります。
髪の毛 :100μm
スギ花粉: 30μm
黄砂 : 5μm
PM2.5 :2.5μm以下の粒子全て
ただ、自然界にも細かい粒子は舞っていますが、砂埃や花粉など自然由来の物質はその殆どが2.5μm以上になります。一方、人間が人工的に創りだしたススなどは2.5μmを下回るものが非常に多く、また毒性を持っているものがあるためその危険性に注目が集まるようになりました。
人工的に創りだされたPM2.5に注目が集まる
PM2.5として以下のものが代表例になります。
酸化硫黄(SOx)、酸化窒素(NOx)
物を燃やした時に発生するものです。特に石油や石炭を燃やした時に発生することが多いです。
余談ですが、1990年台に「酸性雨で森林が枯れる」という話題にあがりましたが、これはSOxやNOxが大気中の水分と反応して硫酸や硝酸になって酸性雨として降り注いだことが起因となっています。
自然界のPM2.5
松や檜から出るモノテルペン類もPM2.5に該当します。これらは森などに行った時に嗅ぐことのできる「森らしい香り」の一部になっています。
PM2.5制定の歴史
日本においては40年以上前から微粒子に対する規制はかけられており1972年には浮遊粒子状物質に関する環境基準が決められました。
これに遅れて1987年にアメリカで10μm以下の物質のことをPM10と呼ぶようになります。
何故10μmなのかというと、10μm以上の粒子は口や鼻から入っても、肺までは到達しない(鼻水として排出されたり、胃に落ちて便として排出されるため)のに対し、10μm以下の物質は肺まで到達してしまい、かつそこで沈着してしまい健康被害をもたらす可能性があるためです。
この後、より小さい粒子の方が、より肺の奥にまで到達して呼吸器や循環器に悪影響を与えることが研究で判明し、1997年にアメリカでPM2.5が制定されるにいたりました。
1972年:浮遊粒子状物質に関する環境基準(日本)
1987年:PM10制定(アメリカ)
1997年:PM2.5制定(アメリカ)
2006年:WHOがPM2.5の指針
2009年:PM2.5の環境指針(日本)
2013年:WHO(世界保健機関)がPM2.5は5段階のがんリスクの中で最も高いレベルに分類。
身体への影響
微粒子が肺に入ってしまうとなかなか出てくることができず、沈着してしまい健康に深刻な被害を与えてしまいます。
WHOの報告では年間大気汚染で370万人の人が亡くなっていますが、うち20%にあたる70万人程度がPM2.5によるものだと推定されます。
引用元(WHO HP)
報告されている例では、「喘息」や「アレルギー性鼻炎」を悪化させる可能性が大きいとされ、呼吸困難や肺気腫になりやすいと言われている。
PM2.5の基準値
日本における指針は環境省が2009年に提示をしています。長期的な影響を考慮するものと、短期的に気をつけたほうがよい濃度の2種類が制定されています。
環境基本法第16条第1項に基づく人の健康の適切な保護を図るために維持されることが望ましい水準として以下のとおり環境基準を定めています。
1年平均値 15μg/m3以下 かつ 1日平均値 35μg/m3以下引用元「環境省 HP」
また、これとは別に「注意喚起の指針」があります。1日の内、1時間でも80~85μg(計測する時間によって異なる)以上になった場合に発令されます。
PM2.5 | |
70μg/m3以上 | 不要不急の外出や屋外での長時間の激しい運動をできるだけ減らす。 呼吸器系や循環器系に疾患のある者、小児、高齢者等は体調に応じて、より慎重に行動することが望まれる |
70μg/m3以下 | 特に行動を制約する必要はないが、呼吸器系や循環器系に疾患のある者、小児、高齢者等は、健康への影響が見られることがあるため、体調の変化に注意する |
あなたの住む地域のPM2.5の濃度は?
環境省が各地域で測定しているPM2.5の値を見ることができます。見て頂けるとわかりますが、環境省が提示している15μgにかなり迫っていることがわかるかと思います。
諸外国のPM2.5の濃度はどの程度か
世界保健機関によると多くの発展途上国ではWHOが長期的なリスクを考慮したPM2.5の上限値の4~12倍ものレベルだと報告しています。
北京の濃度は上限値の25倍!?
2013年に北京の市街地が濃い煙に覆われた映像をあなたも見たことがあるかもしれません。この時のPM2.5はなんと800μg/m3以上と記録されています。環境省で掲げられている日平均35μgの25倍にもなります。
2013年に現れたこのショッキングな映像と数値ですが、突如として高濃度になったわけではなくPM2.5のデータが取られ始めたのがごく最近だっただけで、2000年以 降は割と高濃度のPM2.5が蔓延していた状態が続いていたものと思われます。さて、肝心なのは高濃度の状態が毎日続いているのか?ということです。
結論から言えばここまで高いことは稀ですが、日本の環境基準よりはかなり高いといえます。
PM2.5は空気中に舞っているので、いつでも大体同じくらいの濃度だと思われるかもしれませんが、気流や温度の関係でPM2.5が滞留しやすい状況が生まれてしまうことがあります。状況によっては20倍程度濃くなることも十分にありえます。
中国はいろいろと情報を隠蔽していると言われていますが、北京のPM2.5の濃度を知りたければ北京在住の米国大使館の人が測定したtwitterを見ると参考になると思います。
最近でも日本の環境基準の7倍ものPM2.5が浮遊しています。
何故、中国ではPM2.5が多いのか
SOxの代表例二酸化硫黄SO2は石炭を燃やすことで多く排出されますが、中国では冬場に石炭を使って暖をとっていますので、中国にあるPM2.5の正体は二酸化硫黄が多いと言われています。
また、ガソリンにも硫黄分は含まれますが、日本、欧米諸国は硫黄分の少ない「ユーロ5」と呼ばれるガソリンを使っているのに対し、中国では硫黄分の多い「ユーロ3」と呼ばれるガソリンが使われているため拍車をかけてしまっているのです。
ちなみにPM2.5に含まれるNOxは自動車の排気ガスが由来となるものがほとんどです
PM2.5対策